第1章 面影 〜サスケ〜
その後、二人は昆布のおにぎりとおかかのおにぎりに仲良くかぶりついて、楽しい昼休みを満喫した。
「あ、サスケ、ほっぺにご飯粒ついてるよ。」
ふと、少女が自分の頬をつついて、サスケに位置を示した。
「え、どこどこ?」
指摘を受けて、サスケが自分の頬の上を探す。
「そこじゃなくて……ココ。」
反対側を探しているサスケを見て少女は可笑しそうに笑うと、弟の頬から米粒を取った。
それをそのまま、間髪入れずに自分の口に放り込む。
白くて細い人差し指の先が桜色の唇に包み込まれる、その様子はなんだか艶めかしくて、サスケは姉の仕草に釘付けになってしまった。
チュッ、と音がして指先と唇が別れたとき、サスケは思わず、ゴクリと唾を飲み込んでいた。
「……はい、ご馳走様。もー、もうすぐ卒業なんだから、もう少し落ち着いて食べなさい。」
「……あ……う、うん。」
サスケは我に返ると、顔を少し赤くして、少女に頷いた。
自分の姉が、異性としてひどく魅力的なことに気がついてしまい、心臓がドクドクと煩く脈打っていた。
「うん?サスケ顔赤いよ?大丈夫?熱でもあるんじゃない?」
少女がサスケの前髪をどかし、自分の前髪を横に流して、額と額をくっつけた。
体温が急上昇し、少し熱めのサスケの肌に、少女のひんやりした肌が張り付く。
それ以上に……うるうるした青い宝石が、それを優雅に縁取る白い睫毛が、
鼻腔をくすぐる芳香が、ぷるぷるした薄い唇が、すぐ側にある。
それは今のサスケにとって、あまりに刺激が強かった。
「わっ⁈……ね、姉さん……」
そんなに近づいたら唇がくっついちゃうよ、サスケがそう言うより早く、少女はサスケから離れた。
「……うーん、熱いと言えば熱いけど、熱がある、ってほどではないかな。でも、辛くなったらいつでも言ってね?」
「……うん……」
サスケは胸の高鳴りを少女に気がつかれなかったことに安堵し、そう返した。
全部、姉さんのせいなんだけどな、とは言わず。