第2章 出会い
ハッと意識を戻すと、会場はアンコールの声で埋め尽くされていた。
「自由、圧倒されてんじゃないの?」
「そ、そんなことないですよ!」
神谷さんは面白がってニヤニヤと笑いかけてくる。
俺は咄嗟に意地を張って嘘をついた。
「でも…なんで彼女がこんなに人気なのかは分かりました。」
「いや、きっとまだ全部は分かってないよ。」
「え?」
「伽菜の大きな魅力はまた別にあるから。」
なんなんですか?と聞こうとすると、ステージに彼女が走って現れた。
「ほら、見てればきっとわかるから。」
「アンコールありがとうございます!!次の曲では会場中を回って皆さんのお側に行きたいと思います!」
彼女がそう言うと曲のイントロが始まり、気づけばトロッコでスタンド席の前を回り始めていた。
関係者席はスタンドにあるから、必然的に彼女は目の前に回ってくる。
それにワクワクしている自分がいた。
曲が2番に差し掛かる時、トロッコは関係者席の前に来た。
多分神谷さんと彼女の目が合ったんだと思う。
その時、彼女は今まで見せていた笑顔とは少し違う安心したようなふにゃっとした笑顔を見せた。
そして、神谷さんに向かって手が取れるんじゃないかというくらい激しく手を振った。
神谷さんはそんな様子を見て呆れて、でもとても嬉しそうに手を振り返していた。
「…あんな表情もするんだ…。」
「ん?なんか言った?」
「いや、何でもないです。」
さっきの彼女の表情を見て、不覚にもドキッとしてしまった。
今までに無いくらいに胸が高鳴った。
でもこれは違う。そういうのじゃない。
ただ驚いただけだ。
絶対に違うんだ…!!