第74章 キミのトナリ オレのトナリ(及川徹)
『そうですかーー!
もう!早く前髪なおしてよー!
私まで岩ちゃんに
怒られるじゃんっ』
「岩ちゃんは姫凪には
怒らないでしょ
いっつも俺ばっか怒るんだから…」
『岩ちゃんは優しいからね~』
「ムッ…。
岩ちゃんは俺の親友なんだからね
姫凪とは絆の深さが
もう水溜りと海くらい
違うんだからね!」
キャンキャン言い合って
戯れて笑って
別に不満があるわけじゃないんだよ
キミのトナリには
俺が居るし
俺のトナリはキミの指定席だし
でも寄り添わない背中が
触れない指先が
無性に寂しいときがあるんだ
怖い夜があるんだ
目が覚めたら
キミのトナリが変わってそうで
『徹?どうしたの?
行かないの?』
「あぁ、ごめんごめん
行こうか。
岩ちゃんが待ってるね
ねぇ姫凪…!」
不安で胸が痛くなる時があるんだ
『なに?』
「…可愛くなったよ
その前髪似合うじゃん
キマらなかったら
いつでもセットしてあげるから
甘えておいで?」