第72章 ♑瞳を閉じても(赤葦京治)
切れた電話
静寂の戻った部屋に
心臓の音だけが響いてるみたいだ
姫凪さん、違いますよね?
木兎さんと居るわけないですよね?
不可抗力で
二人きりになった事はある
そんな時でさえ
木兎さんと居るって
チャント伝えてくれていた
そんな貴女が
俺に黙って
嘘までついて居るのが
木兎さんだなんて
あり得ないですよね?
否定すればする程
疑心暗鬼になる
偶然にしては
絶妙過ぎるタイミングなんだ
たまたま木兎さんに急用が入って
たまたま木兎さんに連絡が取れなくて
たまたま姫凪さんは
どこかで誰かと居て…
背中がゾクゾクする
嫌な予感を何枚纏っても
凍る背筋は温まらない
姫凪さん逢いたい
貴女の目を見て聞きたい
"木兎さんと一緒に居たんですか?"って
そして、貴女に見つめられて言われたい
"そんなわけないでしょ?"って
なのに貴女は
どこにも居ない
どこに居るかさえ
教えて貰えない
俺は貴女の何なんですか?