第72章 ♑瞳を閉じても(赤葦京治)
鈍いなりに考えようと
脳に酸素を送ってみる
宮侑に木兎さんが言って急用ってのは
黒尾さんの事だろうか?
木兎さんが時間に遅れたりするのは
それ程は珍しくないけど
急用に遅れる程ルーズなわけじゃない
黒尾さんと急用は別件か…
女性?
いや、まさかな
黒尾さんとの約束を蹴ってまで
捩じ込む程の約束をする
女性が近くに居るとは考え難い
姫凪さんなら
話は別………って
何考えてるだ、俺は。
〈だから、お前か宮か
どっちかと居るんじゃねぇかと思ってさ〉
「俺にも宮侑にも連絡ないですよ
それどころか今日は
一度も会ってませんし
木葉さんと飲んでるんじゃないですか?」
あるわけないじゃないか
木兎さんが
俺に何も言わず姫凪さんと、なんて
〈木葉は俺とさっきまで飲んでた!
ったく、何やってんだよ…〉
「まったく…ですね」
あり得ないと思えば思う程
気持ちの揺れは大きくなる
〈どした?声小さくね?
あぁ、もしかして
姫凪が寝てんのか?
悪かったな、夜遅くに
他のヤツに当たってみるわ〉