第72章 ♑瞳を閉じても(赤葦京治)
イヤイヤながらも
ペンを走らせる侑が
携帯に手を伸ばして
「なんか用事あるん?
俺も掛けよか?」
木兎さんの番号をディスプレイに映す
「…いや、特に用事はない。
いつも何かしら連絡あるのに
珍しいと思っただけ
こっち来るって言い出したら
面倒だから掛けなくて良い
サッサと終わらせよう」
侑の携帯を取り上げ
続きをしようと促す
きっと黒尾さんや木葉さんと飲みにでも
行ってるんだろう
そう思いながらも
何か胸が騒がしい
変だな。
別に木兎さんが誰と飲みに行っても
連絡をして来なくても
こんなソワソワした事は
なかったのに
それにこの気分…以前どこかで…。
どこだったかな?
「あかーし?
体調良ぉないん?
顔色悪なって来とんで?」
侑の声にハッとして
"なんでもない"と返して
課題に向き合うも
ざわつく気持ちは凪いでくれない
なんとか終わった頃には
カナリ遅い時間になってしまってて
侑は終わったら乾杯するはずの
酒を開けないまま眠そうに
帰って行ってしまった