第70章 咲く恋、散る恋、芽吹く恋⑥(宮侑 治)
振り絞った声にも
キツく抱き締める腕にも
サクラは怯まず
真っ直ぐ俺を睨み付けたまま
「…角名くんに
相談する事は…ない。
苦しかったけど…
辛かったけど…それでも
治くんが好きやから
角名くんの気持ちに
甘えられへん…
受け入れる事はずっとナイから
せやから…早く離して」
静かに拒絶を紡ぐ
ユックリ背中に迫る
試合終了
勝ち目なんかなくて
一方的な負け試合なのに
「なんだよ、それ。
苦しいとか辛いとか
そんな思いしてまで
なんで治なわけ…?
意味分かんねぇし…
俺にしとけ、俺は…泣かさない」
まだ藻掻いて足掻いて
「…サクラ、好きだ」
追い掛けるなんて
バカじゃねぇの?
カッコ悪くてイヤんなる。
でも、暴走した感情は止まんなくてさ
自慢の体幹も
心までは支えられないみたいで
グラついたまま
ガラガラと理性は崩れていく
回る邪な思考
このまま押し倒して
無理矢理にでも奪えたら
「いつからか分からねぇけど
お前が好きだった。
そんな顔すんなよ
余計に…唆るから…」
「…イヤや…!」
その声を奪えたら。