第70章 咲く恋、散る恋、芽吹く恋⑥(宮侑 治)
「…一人…?」
「せやけど…」
「…っしゃ…間に合った…」
ツカツカとサクラに近付き
「ちょっと…角名くん?
こんな所で何して…」
「…サクラに逢いに来た
それ以外の理由とか…ねぇし」
「なん…」
「"なんなん"はもう良いよ
なんでもない。
逢いたかったから…来た、だけ」
そのまま腕に閉じ込めた
「はぁ?!
意味分からん、チョット…離し…」
「…イヤだし。
つーか、治となんかあった?
侑とさっきまで居たんだろ…
喧嘩でもしたわけ?
顔…泣きそうになってる」
藻掻くサクラを
がっちりホールドしたまま
目だけ合わせる形で
問い詰める
すると
「…角名くんには関係ない。
もうすぐ治くん来るから離して
誤解されたない!」
棘しか無い言葉が返って来て
ぶつかってる視線は痛い程
拒否のオーラを放ち続ける
睨まれる事より
キツイ言葉より
「…侑呼び出す程
苦しいなら…俺にしとけば
良いじゃんか…
俺の事は浮かばなかった?」
苦しい時の選択肢に
俺が欠片も浮かばなかった事が
悔しくて痛ぇよ。