第70章 咲く恋、散る恋、芽吹く恋⑥(宮侑 治)
その唇を塞げる距離に居るのは
俺なんだ…。
「イヤじゃなく、してやるよ
スグ…俺にあわせて腰振る様になるさ
治よりは自信あるし…
サクラ、俺に溺れろよ」
明るい屋上
青過ぎる空の下
壁に押し付けた身体
逃げ道を塞いで
俺を拒否る唇を塞いでやろうと思った
その刹那
「…サービスはそこまでや。
オイタが過ぎんで、角名」
俺の背中に走る痛み
「治くん!
あの、これは…違うくて!!」
治の声に慌てて
泣きそうになるサクラ
なんだよ。
結局オイシイ所で現れて
「…なんでもエエよ
早よこっち来い、サクラ」
掻っ攫う気かよ。
「…なんでも良くなくね?
つーか、なんでも良いなら
邪魔すんなよ
サクラも…こんな冷たいヤツの為に
泣きそうになってんな
俺で良いじゃん」
俺のセリフに凍り付く青空と空気
分かってんだ。
"なんでもいい"と"どうでもいい"は
違うって。
治は冷たいんじゃないって。