第69章 咲く恋、散る恋、芽吹く恋(宮侑 治)⑤
あれ?口説いてないん?
しかも俺が来る事読んではったみたいやし
なんかメッチャ恥ずない?
「警察犬やないんですから!
まさか部室に居るとか思わへんですやん!
せやし教室とか保健室とか
裏庭とか走り回って…」
「ええトレーニングなったやん」
「オーバーワークで死にますて!」
恥ずかしさを隠す様に出した大声が
「一回死んだくらいが
丁度ええんちゃうか?
姫凪ボロ泣きやったで」
全くトーンの変わらない声で
かき消される
こんな時まで【いつも通り】かい
多分分かってたんやろな
姫凪が泣いてるの見た時点で
俺となんかあったんも
俺が死ぬほど後悔して
走ってくんのも
「分かってます…せやから
その涙止める為に走り回ったのに
…なんで北さんと居るねん!アホ!
心配させんな…心臓止まるか思ったわ」
勢いで捕まえても
俺らの性格じゃ解決せんことも
全部わかってて
姫凪を引き留めてたって思うのは
…さすがに考え過ぎやんな?
そうじゃなきゃ怖過ぎる。