第69章 咲く恋、散る恋、芽吹く恋(宮侑 治)⑤
「侑くん!?」
「…サクラ…ごめん、待たせたか?」
校門で待っていたサクラを見つけ
走る速度を上げて駆け寄ると
「待ってへんよ
さっき着いた所や…えっと…」
寝不足なのか
少し浮腫んだ目元で俺を見上げ
恋人同士みたいな会話に苦笑い
「さよか。
ほな…えっと…部室は鍵掛かっとるし
屋上行こか?
あそこなら滅多に人来やんしな」
気恥ずかしさに俺も苦笑いを零し
寄り添わない背中を校門に見せ
屋上へ向かった
「あ、侑くん
コレ…今日来てもらったお礼と言うか
巻き込んだお詫びと言うか…」
良い匂いを纏った弁当箱が
屋上で話した最初のキッカケ
「…ええんか?
治に殺されそやな」
なんとか笑わそうと
何気なく吐いた言葉に
「治…くんには…
今日晩御飯…作る
チャント話して…
その…仲直り?って言うんか
分からんけど…
昨日あやふやにしてもうた事
スッキリしてから作りたいって…思って」
ギュッと抱き締められる弁当箱
目には少し疲れが滲んで
ユックリ涙がそれを追いかけて来てる