第61章 クロ猫と傘と恋(黒尾鉄朗)企画転載 完結
「姫凪さん!待って…」
買いに来たはずの牛乳を
買わず飛び出したコンビニ
降り出した雨を無視して走り出そうとした私を
「ごめん、これには訳が…!」
クロくんの熱い手が引き止める
聞きたくない
聞くのが怖い
『…どんな理由でも、関係ない。
私は…あの子みたいに笑えない
ごめんね…キミの側に…
私は…居られない』
離れないと
この恋に気付かれる前に
面倒くさいと嫌われる前に
涙顔が見られない距離まで。
「姫凪さん…
それはもう…逢えないって事?」
『…キミがそう思うなら…』
無理やり作った顔は
キミにどう映ったのかは
分からないけど
私の目に映ったキミの顔が
どこか寂しそうに見えたのが
唯一の救いだった
『…また、どこかで』
そんな強がりが言えたのを
自分で褒めて
私は雨の中を去った
それが最後。
それから連絡も無かった
私もしなかった
でも…
逢いたかった
密かに願った再会を
喜ぶ暇もなく強く降り出した雨