第61章 クロ猫と傘と恋(黒尾鉄朗)企画転載 完結
その日も雨で
少し肌寒くて
温かいものが食べたくなる様な
そんな日だった
スーパーで独り暮らしにしては
少し多めの食材をカゴに入れる
今日は来るかな、とか
一人唇を綻ばせながら。
スーパーを出て帰る途中
買い忘れた牛乳の存在を思い出して
仕方なく通り道にあるコンビニへ
この時スーパーまで戻ってたら
夢から覚めないままで居られたのに
狭いコンビニの中
イヤでも目立つ高い背に髪型
ひと目で分かる広い背中
『クロくん!』
「え?姫凪…さん?」
運命、なんて夢見た私の目には
「あ、これは…」
現実が次々と映りこむ
クロくんの手にはゴムの箱
そして側には
「クロ~?まだ?選ぶの長過ぎ~
どれでも気持ちいいじゃん?
早く帰ってエッチしよ?」
甘い声と綺麗な子
『あ…の…えっと…彼女?』
動揺を隠せずに上擦る声に
「まさか!クロはそんな面倒なもの
作らないって、ねぇ?
てゆっか、お姉さんも
クロの寝床のひとつでしょ?
ごめんね?今日は私が先約なの。
また今度にして?」
悪気のなさそうな明るい声が応える
どういう事?
他にも居るの?
その人達とは
そういう関係って事で…
じゃあ、私は…?
「姫凪さん…俺…」
クロくんの声が私の頭の上に
ユックリ降ってくる
私は何を言われるの?
キミは何を言うつもりなの?
膨れ上がる不安は
『…邪魔してゴメンね!クロくん!
私帰らなきゃ!』
無駄に大きな声を放たさせた