第61章 クロ猫と傘と恋(黒尾鉄朗)企画転載 完結
「分かんでしょー?
いい大人なんだから」
早く化けの皮、剥がれろよ
「もしかして
無理矢理されるのがお好みですかァ?
好きにシテやるから
お強請りしてみたら?」
首筋に埋める顔
甘い香りは他の女と変わらないのに
『じゃあ…』
「ナニ?」
『教えて?キミの事
私に何が出来るかも…』
なんでそんなにも透明なんだよ
少しでも汚れてたら
そこに隠れてられるのに
まるで水みたいに澄んでて
俺の心まで映してしまいそうで
「…何も…しなくて良い…
少しだけココに居てクダサイ」
上手く取り繕えず溢れる本音
『…うん。分かった
ねぇ?名前は?』
「クロ
アンタは?
…あ、下だけで良い」
こう言ったのは悪あがきの名残り
この人に
『…姫凪』
姫凪さんに縋りつき過ぎてしまわぬ様に…
精一杯、張った意地だった
「…あったけぇのな…
寝れそう…」
『どうぞ?寝るまで居るよ』
「ラッキー…」
姫凪さんにしがみついて
疲れを伴わない眠りを手に入れた
泊まって抱かなかった女は
初めてだった
泊めておいて俺を求めない女も
初めてだった
それから頻繁に通う様になった
姫凪さんの部屋
身体の関係はなくて
ただ抱き締めて眠る
いつも荒れる時期は
姫凪さんの所へ出向いた
ただ、俺もオトコだから
溜まらないわけもなくて
でも姫凪さんだけは
抱きたくなかった
関係が変わるのが嫌だったんだ
一度抱いたら
俺はもう止まれない
姫凪さんを求めてしまう
それが、分かってたから。