第55章 ♉わざと、の効果(孤爪研磨)生誕記念 完結
そそくさと出ていこうとする
おれの背中に
「いやいや、鉄朗がアイちゃんと
喧嘩した時も相当やん、なァ?鈴村」
「それな~
鉄朗くんのスライディング土下座
いつか動画撮りてぇもん
超絶かっこ悪ぃの!」
「うるさいですぅ!
良いんだよ!
かっこ悪くても!
アイを失う事に比べたら
どうって事ないんだよ!」
三人の声がぶつかる
かっこ悪いとか何かヤダ
そんな事が頭に浮かびながら
向かう木兎サンの家
拗ねた姫凪を
どう攻略するか考えてみるけど
なかなか浮かばない名案
車で数分あっという間に着いた目的地に
少しずつ焦り始める
「鈴谷…姫凪怒ってるかな?」
「今更ですか?坊ちゃん。
覚悟して黒尾様のお宅を選んだんでしょ?
置いて行かれた
姫凪様がヘソを曲げられるのも
無理はないでしょ?」
「…置いて言ったっていうか…
鈴谷意地悪…」
ため息を吐くおれに
「先程の黒尾さん達の会話
聞こえていたでしょ?
グダグダ考える前に
行動ですよ?
かっこ悪くても」
そう言って車のドアを開き
”いってらっしゃいませ”
そう言って頭を下げる鈴谷
考える前に行動とか
トラやリエーフじゃあるまいし…
勝算もなんにもなく
ガムシャラなんて
そんなのアバウト過ぎるよ。