第6章 ♢キスしてそれからは【木葉秋紀】
体育館の前、部活に向かうあいつの姿。
お願い、少しだけ待って。
「木葉っ!!!!」
大きな声で叫べば、慌てて振り返る彼。
驚いたような、気まずそうな、そんな微妙な顔。
「な、なんだよ前田……」
「好きだよ、木葉」
「…は?」
「付き合ってもないのにキスして、気まずくなって気付いたの。
私、木葉のこと好きみたい」
はっきりそう言えば、焦ったようなばつが悪そうな顔をしてこっちを向く。
…ぱちっと目があった彼の顔は、少しだけ赤かった。
そして私の元へ来ていきなり抱きしめた。
あまりのことで心臓が一瞬で飛び跳ねる。
「…俺だって好きだわ。もう友達やめね?」
そう言ってまた力を強めた。
実はこの出来事をバレー部のみんなは体育館の中から見ていて、
木兎が動画を撮っていたなんていう話を知るのはまた別の日のこと。
おわり。