第5章 ☆告白のタイミング【岩泉一】
○おまけ
「大好きだよ、ハジメくん」
さっきまで泣いて、俺の話を聞いてくれてたはずの彼女は今、笑顔でそう言った。
少しだけ目元が赤いのに優しく笑う彼女は凄く、綺麗だと思った。
「…じゃあ、またね」
言葉が出ずにいるとシホはくるっと回って、自分の家に帰ろうとする。
ダメだ、行くな…っ。
そう思った瞬間、彼女の右手を掴んでいた。
振り返った彼女の顔は少しだけ赤くなっていた。涙のせいなんかじゃない。
言い逃げなんてさせねぇよ。
言い逃げなんてされてたまるかよ。
いつか言おうと逃げていたセリフを先にとられて、こんなカッコ悪いまま、
明日になってたまるかよ…っ。
いつか、いつか言おうとしてたセリフ。
好きだって何度もコイツに言おうとしてた。
でも仮に付き合えたとしても、部活がある。
俺は部活に全ての時間を注ぎたかった。
そしてずっと中学の時からずっと、先延ばしして来た。