第5章 ☆告白のタイミング【岩泉一】
「ハジメくんはいつもカッコよかったよ…っ」
なんとか言い返したくて溢れた言葉は、涙と同時に落ちていった。悔しいのは分かる、分かるけどね、本当にハジメくんはカッコいいんだよ。
及川くんと一緒に喜ぶ時だって、花巻くんや松川くんたちと学校で笑っている時だって、
本当にハジメくんはカッコいいんだよ。
言いたいことはたくさんあるのに喉に詰まって言葉が出ずに、その一言だけが落ちていく。
思わず落ちてしまった涙をハジメくんに見せてはいけないと思って、私も下を向いた。
…でも、私がそう言ったと同時に彼の顔が上がるのが分かった。
「…お前にはかなわねぇや」
ふわっと香るハジメくんの匂い。
きっとシャンプーだ、これ。お風呂入ったばっかりだったのか。
暗くてわからなかったけど、ハジメくんの髪は濡れていた。
髪から落ちた水滴が私の首元に落ちる。
「…は、じめくん……っ」
抱きしめる、というよりは私に体重を乗せて寄りかかってきた。
少しだけ重い、でもなんだか柔らかい。
そんな感じが私を包んだ。