第5章 ☆告白のタイミング【岩泉一】
言わなきゃ、何か言わなきゃ。
そう思うのに言葉が出てこない。
そんな私を見て察したのか、それとも単に話を切り出しただけなのか分からないけど、私より先にハジメくんが話し出した。
「…今日、応援ありがとな。
応援席にいるとこ途中で見つけた。
…いつも応援してくれてありがとな」
"いつも"
この言葉にはどんな意味が含まれているのか。
ハジメくんの高校でのバレー生活は今日で終わった。
もちろん大学でもやるんじゃないかなって私は思うし、彼のバレー生活はまだ続くと思う。
…でももう、私が高校生の彼の試合を応援することはない。
彼の言った"いつも"はいわゆる、"今まで"同じような意味で最後の言葉的なものだと私は感じた。
"今までありがとな"
……多分、そういうことだよね。
目の周りが熱くなる。
ダメだ、私が泣いてどうする。慰められる側に回ってどうする。
絶対泣いちゃダメだ。
グッと涙を堪えてハジメくんの目を真っ直ぐ見た。
「…カッコよかったよ、ハジメくん」