第5章 ☆告白のタイミング【岩泉一】
わずかに見える彼らの姿の中には私の好きな人。
金田一の隣に居る彼の顔はよく見えなかった。
…いや、見ることが出来なかった。
ずっと見ていた人。
ずっと隣にいた人。
ずっと私にバレーの話をしてくれた人。
…もう、話してくれなくなるのかな。
そして話を終えた彼らは、応援してくれた人たちに挨拶するために小走りで近づいてきた。
二階と一階だが、さすがに顔くらいは見える距離だ。
いつもはすごく男らしいのに、彼は周りより遅いスピードでこちらへ向かってきた。
そしてだんだんと遅くなる足。
…わずかに見えたのは彼の涙。
泣いているところなんて、幼馴染の私でさえ滅多に見たことがない。
すると後ろから思いっきり彼の背中を及川くんが叩く。
そして彼を抜いて行く。
及川くんに続いて、花巻くんも松川くんも彼の背中を叩く。
その姿を見て、あぁ、彼はすごく頼りにされていたんだなと感じた。
私たちの前で一列になり、「ありがとうございました!!」と言っていた青城の人たちの中の彼はもう、
泣いていなかった。