第12章 ♢ストレートと不器用。【白布賢二郎】
淡々と話し続ける彼女に、驚きが収まらない。
「は、はあ?なんだよそれ、そんなこと知らないんだけど…」
「覚えてないでしょ?2年生になって最初の席替え、私の隣だったこと」
彼女にそんなこと言われてもまったく思い出せない。今まで誰と近くの席で、誰の隣で、なんて覚えているわけがない。
ああ、でも、
「…そん時答え教えてくれたのお前じゃなかったっけ」
「あれ、覚えてた?」
…そう、あの日。
いつもは授業に集中しているのに、ふと頭の中にバレーのことが浮かんでしまい油断をしていたら先生に当てられたのだ。
やばい、と思ったら隣の席の子がトントンと自分のノートを指差し答えを教えてくれたのだ。
ああ、今思い出した。そんなこと。
でもなんでそんなことを覚えているんだろうか??
あれ、絶対忘れてると思ったんだけどなあ、と言った彼女の顔は少しだけ赤かった。
夕日のせいだろうか。