第12章 ♢ストレートと不器用。【白布賢二郎】
そして放課後。
ホームルームが終わると、ノートと教材を持ってシホが俺の席まで来た。
「白布よろしく〜」
ニシシっと歯を見せて笑う彼女。
なーんでこいつこんな子どもっぽいんだろうと思いつつ、見た目は全然そんなことないのでよりいっそう意味がわからない。
「はいはい、で?どこか分かんないとこがあるわけ?」
「あ〜そうそう、ここの文法イマイチ理解できなくて」
すっと俺の前の席に座り、こちらを向く。肩より長い髪を耳にかける仕草はさっきの笑い方とは似合わず大人っぽい。
柔らかいベージュ色の髪は、風でサラサラとなびいた。
「あ〜そこが違うんだって、それ、時制が一致してない」
「んんん、これめっちゃ難しい…」
「…惜しいとこまでいってるから、大丈夫。この単語はここにかかってて…」
「あ、そっか、そういうことね」
基本的に真面目な彼女は、特に煮詰まることもなく教えたら教えた分だけスラスラと説いていく。無駄口を叩くこともなく、お喋りを始めるわけでもなく。