第10章 *嫉妬と無自覚【角名倫太郎】
「は?何してんのほんとに」
彼氏でもない男の体をそんなに普通ベタベタ触るか?
仲がいいって言っても侑は男だぞ?
フツフツと怒りがこみ上げてくる。
状況がうまく飲み込めず目の前の二人から目を離さずにいると後ろから声がした。
「おっす、角名〜どないしたん」
「…治、」
「先入るで〜」
治は俺のことを気にすることなく、真っ先にドアを開けた。
その瞬間に2人はこちらを見て何事もなかったように離れた。
「あーーーーーーー!治!教科書返せや!!」
侑は治を見た瞬間騒ぎだし、こちらへ歩いてきた。
相変わらず騒がしい双子。
「角名〜やっほ〜」
当の彼女は何事もなかったように俺に手を振ってきた。
こっちの気もしらないで。見てないと思ったら大違いだからな。
不機嫌になった俺は「っよ、」と小さく言い、彼女に近づくこともなく自分の支度を始めた。
何か言いたげな彼女だったが、今は部活前。諦めて自分の仕事をしにその場から離れた。