第9章 ♢色っぽくて意地悪なキミと。【松川一静】
「俺はお前のこと好きだけどな、前から」
松川はサラッとそう言い、ノートに視線を落とす。
今、なんて言った?
松川が?私のこと好きだって?
聞き間違いではないその言葉は私の頭の中を突き抜けていった。
心臓の音が一向に鎮まらない。
「ま、返事はまた落ち着いたらちょーだい」
「え、あ、うん?」
「はい、勉強再開しまーす」
「え!?嘘、嘘でしょ!?この状況で再開!?」
「あ、キスが良かった?」
「違うけども!!!!!」
慌てる私に、「ここは図書室ですお静かに」と子どものような顔をして笑う松川。
今の雰囲気の中で、余裕な顔してるなんて、意味わからない。
「松川って色っぽいけど、子どもだ…」
「ん〜?俺色っぽい?」
「…はい、とっても」
返事なんて決まってる。
決まってるけども、
「シホ、俺に見惚れてないで問題解いて」
「な、名前…、ああああもう集中できないいい、ずるい松川めええええええ」
どうやらこの人には振り回されっぱなしのようだ。
おわり。