第9章 ♢色っぽくて意地悪なキミと。【松川一静】
びびび、びっくりしたああああ。思わず松川にぶつかっちゃったけど完全に体が鍛えられた体って感じしてた。がっしりしてた。
ぶわっと顔に熱がこもる。
暑い、すごく暑い。本当に暑い。もうやだ、元の私に戻ってほしいのに。
松川はいつもどおり余裕そうな顔してるのに、なんでこんな私変なんだろう。
「なにこの文章…」
「昨日出てきたよ、お前寝てるから」
「ぐぬっ」
図書室についた私たちは、端っこの席に座った。
端にきたからなのか、周りには人がいない。
「前田、今日なんかずっと上の空だな」
ふと松川がそんなことを言った。バレてる。完全にバレてる。
だが、そんなこと言えるはずもないので、
「え。そーんなことないよたぶん」
なんてごまかす。じっと見つめてきた彼の目は真っ直ぐで、何を考えているか分からない。
目が合うと嘘が見抜かれてしまいそうで合わせられない。
「ほんとか?」
「っ、松川ってあひる口だなって」
「今更それいう?」
頓珍漢なことを言うとクスクス笑い出す松川。
面白いことを言えたのだろうか。
上手くごまかせたのかもしれないと思うとちょっとだけホッとした。