第9章 ♢色っぽくて意地悪なキミと。【松川一静】
「あいよ、わざわざどーも」
「お、あれじゃん噂の。シホちゃん」
花巻はそう言いながら私の方を見た。
…ん?いつ噂になっていたんだ?私は。頭にはてなを浮かべながら首を傾げるとバシッと軽く松川は花巻を叩いた。
「本人の前で言うなよ、お前」
「あ、そかそか。ごめんな〜気にしないで!」
ニッと笑った花巻は、どことなく松川と笑い方が似ていた。
ずっと部活で一緒にいたせいかなのか、なんなのか。
花巻と一緒に話す松川はいつもの大人っぽい松川ではなく、悪戯っぽい高校3年生の松川だった、
ちょっと、可愛い。
「じゃーな、松川。お勉強頑張って」
ニコニコしながら花巻は松川に手を振り、教室から出て行った。松川も手を振り返し、「ふう、全く」と言いながら微笑んでいた。
「ごめんな、待たせたわ。図書室いこ」
「…ん。」
そう言って二人で席を立ち、横に並んで図書室へ向かった。