第9章 ♢色っぽくて意地悪なキミと。【松川一静】
「じゃあな、前田。また明日」
そう言って松川の大きな手が、私の頭をぽんっと叩いた。
予想以上に大きい手が、彼の少しだけ温かい手が、なんだか私をドキドキさせる。
「ん、また明日!」
私が松川を見上げて言うと、松川はまた、優しく笑って、私から手を離して、彼らの方へ向かった。
見上げた松川は思ったよりは身長が高くて、いつも見ていた背中とは何か違った。
「おい今、松川のやつあの女子の頭撫でてなかったか!?」
「まっつんったら罪な男だねえ!」
うっすらそんな声が彼らのとこから聞こえた。
罪な男。本当、罪な男だと思う私も。
松川ってあんな感じだったっけ?
あんな優しく笑うような人だったっけ?
私、こんなにも松川のこと考えたことあったっけ?
「〜あっついな、もう」
触れられた自分の髪を触って、窓の外に目を向け、出来るだけ松川の背中を追わないようにした。
色男って怖いわあ。
なーんて、面白おかしく考えるようにしたけど、心臓の高鳴りは止まらないし、遠いのに、教室の外の声に耳をかた向けてしまう。
明日が来るのが、少し楽しみで、少し緊張するのはなんでなんだろうか。
松川相手なのにな。ね?