第9章 ♢色っぽくて意地悪なキミと。【松川一静】
「松川がいいなら教えてほしい、」
あの英語の先生、何回か小テストの悪い点数とると再テスト放課後にやらせるんだもんなあ、それは嫌だ。
「おっけー、次の小テスト明後日か。じゃあ明日の放課後でいい?暇?」
「暇!!お願いします!松川!!!」
「はいよ」
フッと笑って手をひらひら私に振りながら、彼は体を前に向けた。大きい背中はすごくたくましくて、男の子って感じだ。
松川と今までこれといってすごい仲が良かったわけではないが、席が近くなって話す機会も増えた。
気さくで聞き上手さんな彼は、欠伸をしながらノートをとっていた。
そんな彼を後ろから見てたら再び睡魔に襲われ、この無様な結果が出たにもかかわらず私はまた机に全体重を乗せ、意識を手放した。
「前田、授業終わったぞ」
落ち着いた低い声が聞こえる。あれ、今何時だろ…。
声は聞こえていて、意識も復活した気がするのにどうしても目が開かない。寝起きが悪い特徴かもしれない。
「起きな、もう帰る時間だから」
…ああ、この声松川の声だ。そう思い伏せていた顔をあげようとすると私の髪にふわっと松川が触れる。
…おっと?
きっと起こされているのだろうけど、髪を触られているのが無性に恥ずかしくなり顔があげられない。