第8章 ☆遠くて、遠い。【西谷夕】休止してます、、、
そして、やってきた東京合宿の日。
音駒高校の勝率はまぁ普通で、梟谷よりはやっぱり下。
マネージャーもマネージャーなりに忙しくて、あまりゆっくりする暇はなかった。
それでもやっぱり目線は彼を追っていて、
気付いたら少しだけ立ち止まってしまっている。
彼に向けているこの視線は、憧れか、好意か。
「…っ、」
呆然と彼を見つめていたら、あの小さい子とチェンジしてベンチに戻る彼と目があった。
一瞬、ほんの一瞬だけニカッと笑って試合に集中する彼。
気付かれたことが少し恥ずかしくて、その真剣な眼差しが少しだけ羨ましくて、
なんとなく1人だけ違う色のユニフォームを着た彼が、中学の私と重なって、でも完全には重ならなくて。
彼と私は違う。一緒になんてしちゃダメだと言われてるみたいで。
「…天才と凡人は、身分違いみたいなものかも」
ふいに溢れた言葉は誰にも聞かれることなく消えて、私はすぐに仕事へ戻った。