第7章 嘘つきな君の心
肩を叩かれる感覚に
ゆっくりと目を開けると
そこは見たことも訪れたことも
ない家の前で…
村上くんを
追いかけるように車を降りると
玄関の扉が開いて
中から一人の女の人が顔をだし
村上くんはその人に向かって
「すいません突然お邪魔して…
朝電話させてもらった村上です。
あとうしろにおんのが大倉です…」
そう言って丁寧に頭を下げる…
「遠いところ来て頂いて
ありがとうございます。
どうぞ中に入って下さい」
「ありがとうございます…」
そんな短い会話を済ませ
村上くんについて
その女の人の横を通りすぎた時
柑橘系の甘酸っぱい匂いが
鼻をくすぐって
踏み出した足をピタリ止め
下を向いたままだった顔をあげ
まじまじとその人を見つめると
不思議そうに俺の顔を見ながら
その人はふわりと優しく
俺に笑いかける…
その笑顔を見て
解った…
この人は
くるみのお母さんなんやって…