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夏の風

第1章 出会いの日


子供みたいに屈託のない

彼女の笑顔に

ぼんやりと見とれていると…



「お待たせ!」



そんな声がして振り返れば

安はビニール袋を片手に

息を切らし走ってきて


もう少しゆっくりでも良かったのに…



初めて会った女の子を前に

そんなことを考えている自分に

正直驚ろかされる…



「ちょっと染みるかも…ごめんな?」



そう言って安が消毒液を垂らした

脱脂綿を血がにじむ膝に当てると



「ん~」


なんて顔をしかめるけど

絆創膏を張り終えた瞬間



また彼女は



「ありがとう(笑)」



そう言ってにっこりと笑う…




「俺は章大って言うんやけど

名前…聞いてもええ(笑)?」



そんなやすの言葉に



「なんかナンパみたいだなぁ(笑)」



なんてけらけらと笑って




「私はくるみって言います。

もう一人の背の高い人は?」




「俺は…おおくらです…」



そうぎこちなく答えた俺をからかうように…




「解った(笑)

じゃあ章ちゃんとおくらちゃんだね?」



「いや…だからおくらじゃなくて…

おおくら!!」




「うん、おくらちゃん(笑)」



そんな会話をしながら

いたずらっ子みたいな笑顔を浮かべる…


そんな俺と彼女の会話を

にっこりと天使みたいに

見つめてた安から



「はいはい…もうおくらでもおおくらでも

似たようなもんやんか(笑)

それよりくるみちゃんは今から用事あんの?

もし良かったらお茶でも飲む?」




そんなナンパもどきのお誘い文句が

飛び出し…





「やっぱりナンパじゃないですか(笑)

うれしいですけどごめんなさい…

今日は友達と約束してるんで…

でももしよければ電話番号交換します?

助けてもらったお礼もしたいし…」



そんな彼女の提案に

飛び付くように番号を交換し



丁寧にお辞儀をし

またかつんかつんと軽快な音を立て

人混みに消えていく彼女を

見送りながら


確信してた…



きっと俺は彼女を

好きになってしまうと…
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