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夏の風

第1章 出会いの日


その日は

珍しく安と二人同時のオフの1日で


昼から街中で待ち合わせをして

二人で買い物をしたり飯を食うたり


楽しい時間を過ごしてた…



ちょっと立ち止まれば

汗が吹き出してくるような暑さの中



赤信号が青に変わるのを

安と二人話をしながら待っていると



たーたった…たったた…♪


と…信号が青に変わった音がして

二人で信号を渡り始めると




前から歩いてくる

一人の女の子にふと目が止まった




ひらひらとなびくワンピースから伸びる

細い華奢な足と…


大きなサングラスに覆われた

顔と…


かつんかつんと軽快な音を立てる

右手に持たれた杖…




すれ違い様に

ふわりと彼女から香った柑橘系の

甘酸っぱい匂いに



引き付けられるように

後ろを振り返った瞬間…



彼女はスマホを手にしたまま

前も見ずに歩く男子学生にぶつかられ


バランスを崩して

地面に座り込んでしまう…



そんな彼女に

手を差しのべようと足を一歩

踏み出してみたものの



そこは優しさの塊の安が

ほっておく訳もなく…



俺より先に彼女にかけより



「大丈夫…?

何やねんあいつ…謝りもせんと!!」



なんて…

尻餅をついた彼女を地面から引き上げ

その手を引き信号を渡らせると




「ありがとうございます

私の代わりに怒ってくれて…(笑)」




そう言って彼女はけらけらと

子供みたいな笑顔を見せる



でもそんな彼女の足からは

擦りむいたのか血が滲んでいて




それに気づいた安は



「足…怪我してるわ…

ちょっと待っといてそこの薬局で

絆創膏買ってくる!!」



なんて有無を言わさぬ勢いで

走りさってしまって



後に残された俺は

何にも出来ぬまま



「えっと…」


なんて情けない声を出すはめになる…(涙)




そんな俺に彼女は



「うわ…背が高いんですね?」



なんて笑顔で声をかけてきて



「見えてんの…!?」



そう驚いて聞いた俺に



「見えませんよ…?

でも声の聞こえかたで

背が高いのは解っちゃいますよ(笑)?」



そう言うと

かけていたサングラスを取り


きれいな黒い目を細くさせて

にっこりと俺に笑いかけた…
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