第3章 君の声
痛みが出だした時には…
もうすでに手遅れで
手の施しようがない…
そんなのは
病気の中だけの話やと思ってたのに…
でも現実には
そんなことは当たり前のようにあって
家だって
体だって
人の心だって
みんな同じように
気付かないうちに傷んで傷付いて
気付いた時にはぼろぼろに
なっていたりする…
くるみと連絡が取れなくなってから
2ヶ月が過ぎた頃突然
「俺くるみとあかんなってもうたわ…」
なんて言葉を
村上くんの口から聞かされた…
理由を聞いた俺に村上くんは
「そんなんこっちが知りたいわ(笑)」
とがははと勢いよく笑い飛ばしてたけど
でも俺はちゃんと知ってたよ…?
村上くんがどれだけ
くるみを大事に想ってたかを…
くるみの体のことをちゃんと理解して
その上でそんなのまるごと含めて
包み込めてしまうぐらい
でっかい愛があったことを…
「でもな…?」
そう小さな声で言葉を続けた村上くんは
俺の顔をまっすぐに見つめて
「あいつは口では言わんかったけど
胸の中で俺じゃない誰かを想ってたんは
ちゃんと解ってたで…?」
そんな予想外の言葉を
笑顔で吐き出す…
パニックになりながら
"へっ?"
なんて情けない言葉しか
言えない俺に
「余裕で勝てると思たんやけどな…
相手は俺じゃ敵わんくらいの
かなりの強敵みたいやったわ(笑)」
そう言っていつものように
ぎらんぎらんに光る八重歯を見せながら
ひらひらと俺に手を振った…