第2章 君の隣
朝の自分死ね…!!
そんなことを素で思ってしまっている
今の自分ドンマイ(笑)
村上くんに誘われて
久しぶりに訪ねた村上くんの家は
前のシンプルイズベスト
みたいな部屋とは変わっていて
玄関を開けた瞬間に
懐かしい柑橘系の甘酸っぱい匂いがした…
「ただいまー」
そう声をあげ
中に入っていく村上くんを
「おかえり(笑)」
そんな明るい声がお出迎えをする…
楽しそうにけらけらと
二人が笑う声を聞きながら
身動き一つ取れず立ち止まったままの
俺の耳に
「何してんねん大倉…はよ入れて(笑)」
そんな村上くんの声が聞こえてきて
情けなくもカタカタと震える足を
一歩前へ動かすと
「いらっしゃい…おくらちゃん(笑)」
初めて会った時から
ずっと変わらない呼び方で
俺の名前を呼ぶくるみの声がして
とっさに下を向いたままだった顔をあげると
俺の大好きな笑顔で
村上くんの側にたつくるみが
目に映り込む…
俺の人生で二度目の後悔の日
見なければ良かった
本気でそう思った…
くるみの手料理を食べている時も
何か会話をしている時も
仲良さげに笑い合う二人を見ている時も
味覚も聴覚も視覚も
すべてにもやがかかったみたいで
あの部屋で見たもの聞いたもの食べたもの
今も何一つまともに
思い出すことが出来ないでいる…
ただ一つ解ったことは
どんなに残酷な現実を
目の前に突きつけられても
俺の心は
ただヒリヒリと痛み続けるだけで
くるみに対する気持ちは
少しも色褪せず
ずっと胸の中に居座ったままなんやという
すごく悲しいけど
でもどこか少し幸せな
現実やった…