第2章 Jewel
『じゃ、いつもみたいに』
《分カッテル》
ドラゴンは全身を輝かせたと思いきや見る見るうちに縮んでいった
そしてそこに残ったのは大きな狼だった
『久しぶりに飲みたい気分』
《俺ハ狩リヲスル》
『じゃ、ここにまた戻ってきてね』
《了解》
女は待の酒場へ向かった
ここしばらく海上で魚しか食べていない
しっかりした食事を取らなければ栄養失調になって命の危険がある
『おやっさん!1杯!』
「あいよー、お前さん若いのによく飲むねぇ」
『そこらの女衆と比べんじゃないよ!』
「すまんすまん、お前さん見かけないねぇ、海賊か旅の人か?」
『しいて言うなら探検家だ』
「へぇー」
女が飲みふけっていると店主があることを聞いてきた
「この辺りの海域にドラゴンとそいつに乗った人間がいるって噂だが、どうなんだい?」
『…さぁね』
「そうかい、海賊達が話してるもんでよ」
『海賊…ねぇ』
女は思い出していた
先程まで攻撃していたあの海賊
黒髪の男の熱い瞳
それがどこか、懐かしいような感覚があった
(バカなのは私か…)
「お前さんはどうやってこの島に来たんだい?」
『ここだけの話さ、港に泊まってる船に忍び込んで来たのさ』
「中々やるじゃあないか」
『そうやって旅をしてんのさ』
女の言葉は嘘だというのにスラスラと口を飛び出ていく
嘘をつくのに慣れているのだろう
きっと、彼女にもそれは分かっている
嘘で嘘を隠していたら、いつしか何がホンモノで何がウソかなんて分からなくなる
その時、店の扉が開いた
「ここらにドラゴンと一緒にいた人間はいなかったか!?」
(…あの男は)
「そんなのいたらとっくに噂になってるよ」
「ははっ、だよなぁ」
あぁ、さっきの男か。と女は剣を側に引き寄せた
『あんた、海賊かい?』
「ん?あぁ、そうだ」
『ドラゴンならさっき羽音を聞いた気がするよ』
店主に聞かれないようにそっとエースに耳打ちした
「ほんとか!?」
『私が聞いた位置を案内しよう。おやっさん、お代はここに置いてくよ』
「まいどありー!」
女はエースを連れて海岸へ
何を考えているというのか
海岸へついた途端に剣を鞘から抜き、エースに向けた
『あなたってつくづくバカね』
その行動と口調の変化に、エースは驚いて口をポカンと開けていた