第5章 鎌ノ助のやきもち
つい先日、なまえは鎌ノ助にみたらし団子を作った。
しかし、真田軍の面々と雑談していた時、なまえのみたらし団子は色々と間違っていたことに気付いた。
そこでだ。誰かに、出来ればなんとなく料理が出来そうな信之に指南を願いたい。
……と、思ったはいいものの、今日に限っていくら探しても信之は見つからない。
挙げ句の果てに、けろっとした様子の幸村が、信之は遠征中だという。
「はぁ……」
「どうしたんだい? そんな顔をしていては」
「才蔵くん!」
「ど、どうかしたのか……?」
なまえ基準の勝手な独断と偏見だが、才蔵は信之に次いでなんとなく料理が出来そうだ。
つまり、今なまえに声を掛けてしまった才蔵は、思いっきり貧乏くじを引いたことになる。
「私に料理を教えてください!」
才蔵となまえは、並んで台所に立っている。
さながら新婚の夫婦のように……それを鎌ノ助は隅から見ていた。
なまえは鎌ノ助の存在すら分かっていないが、視線に込められた殺気は生半可なものではない。
ぶるりと背筋を凍らせた才蔵に、尚もなまえは無邪気に話し掛ける。
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