第7章 鎌ノ助とそれから
「なまえは、お腹がだいぶ大きいんだから、無理させちゃ駄目だよ」
これが、近頃の鎌ノ助の口癖になっていた。
なまえが少しなら大丈夫、と言っても、それじゃあ僕が甘えられないとくる。
一体どちらが子供なのだろうか。
「ふん、今は貸してやってるだけだよ……なまえは僕だけのなまえだもん」
「ぼくのだもん……」
子供相手にむきになる鎌ノ助に、ついつい笑ってしまう。
びっくりさせたね、と大きくなった腹を撫でる。
「この子、どんな子なんだろうね。大人しいのかな」
「……すごく蹴ってる」
「ほんとだっ!」
父と兄が腹にひっつくと、途端に暴れ出す。
いつもは大人しいのにだ。
きっと、父親に似た子が生まれてきてくれるのだろうと、なまえは予感していた。
「そうだ! みたらし団子作っておいたから、そろそろお茶にしない?」
「なまえのみたらし団子……」
「やった!」
とある家族の、幸せなある日のことだった。
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