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《花まる》坊っちゃん成長中

第1章 花輪家のメイドになりました。


「これが花輪家の間取りね。少しずつでいいから覚えてね。迷子にならないように」

 先輩メイドの宮口さんは、優しい人だ。使用人の仕事を一から教えてくれる。私の教育係だ。

 花輪家は大変広い。門扉から見える大きな建物は物置だ。その奥に、広々とした洋風の邸宅がある。そして、花輪家の家族が住む邸宅とは別に、使用人の住む寮もある。
 駐車場には、ロールス・ロイスやベンツ、ワーゲンなどの外車が並ぶ。どれもピカピカに磨かれていて、美しい。
 庭も広い。芝生は綺麗に整えられ、植木も美しく刈られている。色とりどりの花が咲き、枯れた花なんて一つもない。

 使用人の数と質が違うのだな、とそれだけでわかる。
 執事、従者、メイド、料理人、庭師、運転手……どれだけの人を抱えているのか聞いてみると、「この邸だけで十五人」だと宮口先輩が説明してくれた。

「でも、今朝のミーティングでは十五人もいませんでしたよね?」
「今、春休みだから、坊っちゃんと別荘に行っているのが大半かな。あとは、お休みの人もいるし、パートの人もいるからね」
「坊っちゃん?」
「和彦坊っちゃん。四月から小学三年生になる坊っちゃんのために、皆働いているの」

 聞くと、花輪家の当主夫妻は事業運営のため海外を転々としているようで、一人息子の和彦坊っちゃんだけが日本で暮らしているのだという。
 坊っちゃんは長期休みになると、ご両親のもとへ行くか、別荘に遊びに行くらしい。去年の夏休みは地中海クルージングだったそうだ。

 ……絶対、性格悪いんだろうな。

「坊っちゃんは、温厚で優しい性格よ」
「そうなんですか?」
「ええ。だから、そんなに心配そうな顔しないで」

 どうやら顔に出ていたらしい。宮口先輩が笑っている。彼女も温厚で優しい性格。雇用主の性格がやはり影響するのだろう。

 ……性格が悪いのは私のほうだな。

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