第1章 花輪家のメイドになりました。
私の両親はどこにいるのかわからない。施設で育った私は、中学を卒業したら働くと決めていた。だから、高校進学を勧めてくる担任にも、「高校くらいは卒業して欲しい」と言ってくる施設長にも、「就職したい」と言い続けた。
中学校への求人は少なく、衣食住を保障されたものはなかった。担任は最寄りの高校へ問い合わせ、高校へ来た住み込み可の求人を見つけ出してくれた。
それが、花輪家の使用人の求人だった。
高校卒業ではなく中学卒業だということで、採用試験さえ受けさせてもらえないかと思ったけれど、すんなりと筆記試験も面接も受けさせてくれた。簡単な読み書きと、使用人長による面接。問題は何一つなかった。
だから、採用通知が来るのは当然だと思ったし、学校の勉強だけでなくマナー本をひたすら読むことも始めたのだ。
中学を卒業し、施設の私物を選り分けて、旅立ちの準備は整った。
そうして、私は花輪家に使用人――メイドとして就職したのだ。