第2章 【裏】恋のスパイス/ナポレオン・ボナパルト
目を覚ますと隣で寝ていた筈の遥香の姿は無く、脱がした洋服もそこには無かった。カーテンから微かに漏れる光。太陽は真上に昇っていた。いつもなら遥香が俺を起こしに来る筈の時間はとうに過ぎていた。仕方無く自らの意思で部屋を出ると、嬉しそうな声をあげ笑う遥香の声が聞こえた。
「おはよう、ナポレオン。」
陽気な顔で笑う遥香が腰掛けるテーブルには綺麗な包み紙で包装された箱が積み重なっていた。
「今日私の誕生日だからって伯爵とレオナルドさんが。」
それは知っている。遥香の誕生日、誰よりも早く生まれてきてくれた事への感謝を伝える為、初めて二人で一晩寝室を共にした。
「わあ…これ、背中が凄く開いてる。私、こんなの似合うかな?」
嬉しそうにプレゼントを手に取る遥香。幸せそうに笑う遥香を見ると心が穏やかになる。が、この時ばかりはいつもと違った。俺以外の男から貰ったプレゼントを見て喜ぶほの表情にふつふつと湧き上がる嫉妬心。…まさかこんな感情が自分の中にあるとはな。遥香と出逢ってから良くも悪くも俺は新しい感情に振り回される。
「…良かったな。」
「うん。」
その時は湧き上がる嫉妬心に目を瞑ったが、今日一日その感情に振り回される事になるとは思いもしなかった。この屋敷の住人と会う度にプレゼントを渡され、その度に嬉しそうに笑う遥香。プレゼントなんて渡さなそうな気難しい連中も悪態をつきながら真剣に選んだであろうプレゼントを渡していた。