第1章 【甘】安眠のすゝめ/日向志音
いつの間にか寝息をたてて眠りにつく志音。怒られてる最中に寝るか普通?そう思いながら志音の頭を撫でた。
「私だって膝枕した事無いのに。」
不意に漏れた本音に慌てて口を抑えると、伸びてきた腕に引っ張られ、そのままベッドへと転がった。
「は…っ、はあ!?」
人を抱き枕のようにして抱え眠る志音。睫毛が触れる様な距離に思わずドキッとした。
「ちょ、やだ…!離して!」
志音の胸を押すがビクともしない。ていうか、抱きしめられている手に余計力が込められてる気がする。
「…やっぱり遥香とこうやって寝るの落ち着く。」
不意打ちの天使のような微笑みに心臓が高鳴った。私はちっとも落ち着かないし…!こんな状況で寝れるなんて頭おかしいんじゃないの!?そもそも、こうやって寝るの落ち着くって、こんな風に寝たのは何時ぶりよ!志音と同じ布団で寝るなんて小学校低学年以来だし!私と同じ布団で寝るのなんか何でも無いって顔して寝ちゃってムカつく!ドキドキしてるのは私だけかよ!蹴り飛ばしてでも志音の手から逃れようって思ったのに、志音の寝顔があまりにも綺麗で、気持ち良さそうに寝てるもんだから、つい、その寝顔に見蕩れてしまって、もう少しだけなら、なんて思ってしまった。
「…遥香。」
寝言で私の名前を呟く志音にまた胸が高鳴った。
「今日だけだからね。」
本当はね、こうやってずっと志音の傍にいたい。けど、この関係を壊すのが怖い。誰よりも志音の事を欲してるのに、その先を求める勇気が無い。幼馴染み以上の関係を求めて、志音に拒絶されたら私は生きていけない。そう思ってしまう程、私の世界は志音中心で回ってる。だから、もう少しだけこの関係に甘えていたい。