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【乙ゲ】短編

第1章 【甘】安眠のすゝめ/日向志音


《余談》


 ぼんやりとする意識の中、鼻を掠める心地良い香り。今日のクイズ大会、優勝出来て良かった。お姉さんも喜んでくれたし、ご褒美の膝枕も心地良かった。初めて会った時から不思議とお姉さんの香りに心が落ち着いて、お姉さんの膝は凄く安心出来た。ふかふかして気持ちいいし。

 目が覚めると、お姉さんの香りと同じ香りがした。まだ少しぼんやりするけど、熱は大分下がったみたいだ。


「…ん、」


 視線を少し下に向けると、すやすやと寝息をたてて眠る幼馴染み。俺の腕の中にすっぽりと収まっていた。遥香とこうやって寝るの久しぶりだな…。昔はよくこうやって遥香を抱き枕にして眠って、苦しいなんていって怒られたっけ?一緒に眠るような頃は遥香の方が背が高かったけど、いつの間にか大きかった遥香の背を追い越した。


「…あ。」


 そっか。お姉さんの香りに妙な心地良さを覚えたのは、遥香の香りと同じだからだ。なんだろう、シャンプー?柔軟剤?香水は多分、二人共付けるようなタイプじゃないから違うな。安心する香りを手繰り寄せる様に、遥香の体を抱き締めた。
 お姉さんの膝で寝ると、まるで遥香が膝枕をしてくれるような気がして気持ち良かったんだ。出逢った時から感じていた妙に安心する理由が解明し、納得した。
 大人に近付くにつれ、一緒に寝る事が無くなったのは勿論の事だったが、一緒にいる時間も減っていった。それを寂しいと言えば、子供じゃないんだからと遥香は言うんだろうけど、遥香の傍にずっといれるなら、俺は子供のままでいい。そう思う気持ちもあるけれど、早く大人になって遥香に伝えたい言葉があるのも確か。…矛盾してるな。


「馬鹿志音…。」


 眉間に皺を寄せ夢の中でも怒っている愛しい幼馴染みの瞼にそっとキスを落とし、再び眠りへとついた。彼女に怒声を浴びせ、蹴られるまで後数時間、少しでも遥香の温もりを感じていたい。



fin.


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