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イチイ

第6章 第5章 初戦闘体験


 左側に向けて投げたので、当然左側
に仮面の男は落ちる。
 
 ドゴンと音がして、仮面の男は軽く
咳き込んだ。
 
「……てぇ~。化け物かよ」 
 
 零はストンと空中から降りると、仮
面の男を見て──視線を右に向けた。
 
 安全地帯にいる昴たちも零の視線に
先に目をやる。
 
 視線の先、何も無い空間に陽炎のよ
うな歪みが生じた。
 
 じっと見ていると、そこからひとり
の少女が出てきた。
 
 仮面の男と同じ全身黒い服に身を包
んでいる。
 
 深くフードを被っているので、顔が
よく見えない。
 
 僅かに見える肌は白く、不健康な感
じだ。黒いガータータイツを穿いた足
は折れそうほど細い。
 
 少女は1歩歩き出そうとし、小石に
躓いて転んだ。
 
 仮面の男が瞬時に少女の元へ駆け出
し、大丈夫かと声を掛けた。
 
 少女はこくりと頷き、仮面の男の手
を借りて立ち上がる。
 
「何でおまえがここに?」
 
 仮面の男は零のことを警戒しながら
も少女を怪訝そうな顔で見る。
 
「え、呼び出し? 緊急会議って……
何かあったのか? え? はあ? 今
あった? 日本語喋ってくれや」
 
 少女の声は聞こえなかったが、仮面
の男の声はよく聞こえた。
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