第4章 第3章 模擬戦闘体験
「心外な。ボクにわからないことなん
てひとつもないさ」
口を尖らせるリーシアを昴は呆れが
混じった目で見る。
「さすがですね。尊敬します。
俺、もう戻っていいですよね? 次
の時間体育なんで」
「ん、いいよ。もう用はないし。いっ
てらっしゃい」
ひらひらと手を振って、理事長室を
出ていく昴をリーシアは見送る。
「失礼しました」
バタンと扉が閉まり、リーシアと女
のふたりだけになる。
今まで無言で立っていた女が口を開
いた。
「嘘は泥棒の始まりよ」
「僕がいつ嘘をついたというんだい?
沙弥」
沙弥と呼ばれた女は呆れたように顔
を顰めた。
「境桃花がなぜ彼を優先して護
るという質問に対するあんたの回答が
よ。
あんたその答えを普通に知ってるじ
ゃない」
「知ってても教えていいということではないのさ。
寧ろ、ボクがいってもだめなんだ。
彼らが自分で気づかないと……。意味
がない」
リーシアは手のひらを見つめると、
ゆっくりと小指から閉じていく。
その拳を胸元でまた強く握った。