第4章 第3章 模擬戦闘体験
右手で書類に万年筆を走らせ、時々
左手でキーボードを打っていた。
空中に浮かぶデジタル画面が消えて
は現れ、消えては現れるのを繰り返し
ている。
忙しそうで、声がかけづらい昴は女
を躊躇うように見る。
が、女は笑みを浮かべるだけでその
場から動こうとしない。
昴はひと段落するのを待ったほうが
いいのか、声をかけてもいいのか。
決めかねていると、リーシアが口を
開いた。
「もう少しで終わるから、待っていて
くれ」
書類に手を走らせたまま、短調とし
た声でリーシアは言う。
昴は無言で頷く。
それから数分程経つと、リーシアが
腕を伸ばして吐息を洩らした。
「ふはぁ~、終わった~!」
「お疲れさまです。えっと、何の要件
で呼んだんですか?」
「ちょっと書いてほしい書類があって」
リーシアは左の引き出しを開けて、
1枚の紙を取り出す。
「また? 昨日も契約書みたいなのを
書きましたけど……」
「それとは別のものだよ。今君に書い
てほしいのは、これ」
リーシアは昴を手招きすると、1枚
の書類を渡す。
「何ですか、これ?」