第3章 第2章 媒体
「そうですね、そっちから言い出した
ことだし、私が気にする必要ありませ
んよね!」
「そうそう。でも、そこで肯定したら
何かだめな気がするのは俺だけか?」
「だめじゃないと思うから、朝比奈さ
んだけですよ、たぶん」
桃花こちらを見上げて笑ってくる。
昴は困ったように笑いながら頬を掻
いた。
ふたりはそのあとは、無言で街灯が
照らす夜道を歩いた。
数10分程歩いて、マンションの前
に着く。
13階建ての縦長のマンションだ。
「ここか、ひとり暮らし?」
オートロック式のエレベーターの前
に立ちながら昴は硝子の向こうに見え
る中を見る。
「うん」
「へぇ、俺もひとり暮らしだな。ぼろ
ぼろのアパートだけど」
「そうなんですか、みんなが仲良くな
ったら遊びに行ってみたいです」
「みんな、は厳しそうだな……」
まだ少し痛む上唇を触って昴は苦笑
いする。
桃花もあ~……とかいや、うんと~
……とか曖昧な返事を返す。
「まぁ、遊びにくるのはいいけど、連
絡はしてくれ。アポなしは困る」
見られたら困る物があるからなと心
の中で昴は付け足す。