第3章 第2章 媒体
昴の元まで歩くと、ネクタイを掴ん
で、無理やり屈ませて唇を奪った。
昴の上唇を血が出るほど噛んでから
唇を離す。
昴は口の中に塩の味を感じながら目
を丸くして零を見た。
零は舌打ちして、壊れそうなほど強
く扉を閉めて出ていってしまう。
「……大丈夫……じゃないですよね」
呆然としていた桃花は我に返ると、
唇の血をハンカチで拭いてくれる。
「ありがとう……いてて……」
「いえいえ。あ、ハンカチは捨ててい
いです。血ついたの気持ち悪いので」
頷いて、昴は唇をぺろりと舐める。
血はまだ完全には止まっていない。
「てか、何で俺こんな酷い目にあって
んだ?」
「キスが嫌だったんだよ、比奈くんの
こと嫌いみたいだし」
「うそ」
何かした覚えはないし、数時間前に
知り合ったばかりなのに嫌われるとい
うことに、少なからずショックを受け
る。
ショックを受けた昴を慰めようとし
たのか、慌てて紫乃が弁解する。
「あ、嫌いっていうか、好いてはいな
いけど、嫌いって認識するまで比奈く
んに興味はないっていうか……。
これは比奈くんだけじゃないってい
うか……」
「うん、まぁ、慰めてくれてありがと
う……」
紫乃の頭を撫でながらふと気づく。