第9章 第8章 遊園地
なぜそう願ったかと言えば、いちば
ん多く頼んだのは桃花なのだ。
もし桃花が『ひとりでは物理的に運
ぶのは困難』という事実に気づいてい
ながらパシリ仲間を即座に拒否したの
なら。
「かなりショックだ……」
さてどうやって持とうかと悩んでい
ると、優秀な店員は持ちやすいように
してくれていた。
長方形の形をした大きい箱に、ホッ
トドッグ、クレープ、ハンバーガーと
注文の品がすべて置かれている。
もちろん、ただ置かれているわけで
はなく、箱に空いた穴に崩れたり、落
ちたりしないようにピタリと嵌められ
ている。
なんとも親切な気遣いに涙さえ感じ
た昴は代金を払った。
お釣りは貰っていいという言葉に甘
えて残ったお金は財布にしまった。
かなり余分に貰っていたので、パシ
リ代としては得をした。
箱を両手に人混みを避けながら歩い
ていると、どんっと何かにぶつかり倒
れそうになった。
慌ててバランスを取って下を見た。
先ほどぶつかったのであろう人が、
尻もちをついていた。
片手で箱を持ちながら、慌てて手を
差し伸べる。
「悪い。大丈夫か?」
「大丈夫……」
生気のない声だ。触れた手はひんや
りと冷たかった。