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イチイ

第9章 第8章 遊園地


 そんな特権貰った覚えはない。
 
 救いの眼を夕に向けるが素知らぬ顔
をされた。
 
 どうやらひとりでパシリ決定だ。
 
「桃花は、優しいと思ってたんだがな。
俺の勘違いだったんだな……」
 
 その口調が恨みがましいものになっ
たのは仕方ないといえよう。
 
「? 私は、いつでも優しいよ?」
 
 昴はため息をついた。
 
 リーシアから渡された1万円をポケ
ットにしまい、もう1度注文を訊く。
 
 それを忘れないようにスマホのメモ
機能に書いた。
 
 端末地図を見ながら売店に行く。
 
 一番近い売店を選んだが、なにしろ
広大な敷地だ。人も多い。
 
 片道だけで15分かけると、愛想の
いい店員に注文をした。
 
 注文を聞き終わった店員が「少々お
待ちください」と言うので、ぼんやり
と待つ。
 
 そこでまたしても当然の───むし
ろなぜ今さら気づいたのか───疑問
にハッとした。
 
「どうやって持ってくんだ?」
 
 昴には手は2本しかない。けれど頼
まれた品数は2本の手だけでは運べる
気はしない。
 
 桃花たちが、それに気づいていなが
ら昴ひとりにパシリをさせたなら、か
なり質が悪い。
 
 せめて桃花は違ってほしい。
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