第9章 第8章 遊園地
いつもは三つ編みの白髪は高い位置
でひとつに纏められている。
全部桃花がやったものだ。
のんびりと順番を待っていると、子
どもの笑い声が聞こえた。
ふたりは視線を向ける。
父と母と手を繋ぎながら、楽しげに
喋っている。時おり、父親が子どもの
頭を撫で、母親が微笑む。
その様子を見ていた零は少しだけ眼
を細めた。
他の人ならその眼にはなんの感情も
ないと思うだろうが、つき合いの深い
紫乃にはわかる。
零の紫水晶の眼には微かに羨望の色
があった。
本人は、気づいてないのだろう。紫
乃にはそれがわかる。
何か言おうとして、言葉が見つから
なかった。
下唇を軽く噛むと、そっと、零の小
さな手を握った。
少しして、零の手が紫乃の手を握り
返す。
しばらくその状態で沈黙が続いた。
「……あ、のさ……」
僅かに動いた列に合わせて進みなが
ら、紫乃は沈黙を破った。
「あの……桃花ちゃんのこと……なん
だけど……」
瞬間、鋭い光を帯びた紫の眼が紫乃
を射抜いた。
思わず首を竦める。